25人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、2人黙ったままプラネタリウムの会場へ、また後ろから列に並び直した。
亜紀が泣いていたから、周りの視線が少し痛かったが、前の人が少なくなるにつれて、亜紀も落ち着き泣きやんだ。
「プラネタリウム、何年ぶりだろう……」
「久し振り……なの?」
「あぁ、二十歳の時いらい見てないかな」
「そうなんだ……」
さっきの事がなかったかの様に振る舞うシンに亜紀は戸惑っていた。だが、自分も普通に接しようとしている事に気付き、弱さを実感した。
シンとはなれる事は、自分には無理なのかもしれない……。
列も前が少なくなった。あと4番目くらいにカップが貰える、そう思っていたが。
「すみませぇ~ん。カップ終了しましたぁ」
係の人の声が館内に響く。
「えっ!? うそ」
「うそだろ~」
「えぇ~~」
不満の声があちらこちらで聞こえたが、終わってしまった。
亜紀はショックを受けているのか、何も話さない。
「残念だったな」
「……うん」
結局、プラネタリウムを見ても2人の間には微妙な空気が流れていて。そんなに楽しむ事は出来なかった。
「キレイだったね……」
「そうだな」
なんだか気まずいまま、会場を出る。車に乗り食事をしようとレストランに向かう途中、亜紀はデパート駐車場で待たされた。
シンがトイレに行きたいという事で寄ったのだ。帰りにシンは袋を下げてきたが、トイレットペーパーがちょうど切れていたからついでに買ってきたと、トランクにその荷物を詰めていた。
最初のコメントを投稿しよう!