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こういう事はズルイと思ったが、それが亜紀の本心だった。シンのために、そして自分のために。
それを聞いて斉藤は、
「普通そんな事言わないでしょ。しかも本人に」
そう、少し笑っていた。
「あっもしかして、今少しシンの事、許そうとか思った?」
「変な人」
「変? 私が?」
「他に誰がいるのよ」
「それもそうだよね」
亜紀がコクコク頷きながら納得していると、そんな亜紀を見て、斉藤はクスクスと笑った。
「何? 熱でおかしくなった?」
そう慌てる亜紀に、斉藤はお腹を抱えて笑いだした。なんだか自分が馬鹿みたいに思えて、亜紀の発言がなんだかおかしくて。
どうして自分は、こうこの人たちの為に悩まなくちゃいけないんだろうと、次第に馬鹿らしくなって。
「ねぇ、大丈夫?」
亜紀の言葉に何も返さずに、しばらく笑い続けていた。
――「熱でおかしくなったのかと思った……心配したのに」
笑い終えた斉藤をみながら、亜紀は頬を膨らませていた。
「勝手に勘違いするから悪いんでしょ」
なんて冷たい言葉を言いながらも、2人の距離は少し縮まっていた。
「もう熱下がったみたい」
「本当に」
額にちょこっと触る亜紀。
「本当だぁ~」
「勝手に触ったから、さっきのも合わせて罰金2千円」
「はっ!?」
「だから2千円」
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