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(私には何もできない)
シンの幸せを願っていても、失う事が嫌で。シンの苦しみ悲しむ顔が見たくなくて、距離を置く。
結局、それは中途半端……自分でもそれは分かっている。でもどうする事も出来なかった。
――「ただいまぁ」
学校が終わり、家に帰ってきた。誰もいない暗い部屋に挨拶をする。
返事が帰ってこない事に寂しくなるが、返事が帰ってきたら逆に怖い話しである。
亜紀はすぐに部屋中の電気をつけた。そして窓を開け、換気をする。
ピンポーン。
いきなり呼び鈴がなった。亜紀は急いで玄関に向かう。
(誰だろ?)
扉を開けると、隣りの直樹だった。
「こんばんは」
「あっもしかして砂糖借りに来たとか?」
亜紀はすぐにそう聞く。すると直樹は、
「違うよ。ちょっと頼みたい事があってさ」
そう亜紀の顔をジッとみてきた。
「なに? 頼みたい事って」
「あのさ、今妹が遊びに来てるんだけど、夏風邪ひいちゃってさ。俺がバイトに行っている間、様子を見てて欲しいんだけど……駄目かな?」
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