46人が本棚に入れています
本棚に追加
2人は車外へ。12月の冷たい風が2人に吹き付ける。
「さむっ」
亜紀の呟く小さな声が聞こえて、シンは後部座席から、用意してきたコートを取った。
「ほらっ。これで少しは温かいだろ?」
亜紀の肩にかける。
「ありがとう」
という亜紀の手をとって、シンは歩きはじめた。次第に亜紀もどこだか分かったらしく。
「あぁここかぁ」
という。亜紀の声を聞きながら、シンは前にどんどん進む。そして木々の間を抜け、辿りついたのは、3年前に相沢に教えて貰った、夜景の見える2人の結ばれた場所だった。
「綺麗」
「そうだな」
「うん」
「やっぱり寒いな……」
と呟いたシンは、そっと亜紀の肩を抱き寄せた。くっつくと寒さも少しは凌げる。
「思い出しちゃった。あの日の事……私、告白できなくて泣いてたよね」
ボソッと亜紀は呟いたあと続けた。
「あの時、ぼろ泣きだったよね」
「本当に、抱き付いて泣いてたもんな。また泣かせてやろうか?」
「もう」
そう口調は少し怒りながらも笑っている。
「なぁ亜紀」
「ん?」
「俺さ、あの時よりも何倍も何十倍も、亜紀の事好きになった」
亜紀はえへへっと笑うと照れて下を向いてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!