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最近この時間になると、無性にイライラしていた。
塾の帰り道、いつ親に模試の結果が届くのだろうと無駄にビクビク。その反面そんな自分の事が、情けなくてイライラ。
俺は矢野 翼。私立高三年の受験生なのに、自分の将来が全く見えず決められず(何になりたいのかも分からん)親の言いなりになって、大学に受験する事を決めたんだ。
親の言いなりになる事は結局、自分で何も決められないのが悪い……
模試の結果も、自分の普段の頑張りが足りないから悪いのだ。分かっているのだけど――
「自分自身に、腹立ててもなぁ……」
呟いたトコで、このイライラがおさまるわけもなく、家までの道のりを、ウンザリしながら歩いていた。
その時、右手前のコンビニから覆面を被った人間が、慌てた様子で出てくる。その手には包丁を持っていた。
目の前はT字路になっており、その先は住宅街。逃げるとしたら大通りに繋がる、こちら側に向かってくるだろうな。
――相手は包丁を持っているんだから、慎重に対処せねば。
肩にかけていたカバンを勢いよくドサッと下ろして、軽く息を吸い込み、腹にためるように吐く。
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