191人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「俺はこっち側から、地取りしてくるから、水野は反対側から回れや。何事もなく、ちょうど一周したら会えるだろう?」
「はい。分かりました」
「頼むから善良な一般市民を、間違っても被疑者にするなよ?」
疑り深い眼で俺を見るデカ長の背中をバシバシ叩いて、大丈夫をアピールした。
「んもぅ、今日の俺は、一味違いますから、気合い充分でバリバリ仕事をこなしますって!」
「いつもその気合いで、仕事してくれると随分助かるんだがな……。じゃ、頼んだぞ!」
お互いT字路で別れて、捜査を開始した。夜遅くなので、人は歩いておらず、閑散としている。
キョロキョロしながら歩いていると、目の前からドサッと何かを落とす音が、はっきりと耳に聞こえてきた。右前方にコンビニの灯りがあったので、そこに人がいるのを、容易に確認出来る。
一人は、中肉中背の男性――さっきの音の正体は、足元に置かれてる鞄かな?
もう一人はマスクを被り、手には包丁を持った、明らかに強盗の姿をしている人間。
「危ないっ!」
俺が走ってその男性に近づく前に、強盗は男性目掛けて、包丁を振り上げた。しかし鮮やかな所作で、振り下ろされる包丁を持つ手を左手で弾くと、そのまま右手で襟首を掴みながら、体重をかけてぶら下がる。
最初のコメントを投稿しよう!