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それを軸にして、左足を相手の横に出し、素早く体を倒した。その技が決まる瞬間、男性がふっと笑ったのだ。
その勇ましい笑顔に、俺は釘付けになってしまった。
俺が現場で立ち尽くす中、男性は格好良くバシッと横落としの技で倒して、そのまま犯人が着ているシャツを使って、絞め技をかける。
そこで初めて気がついた。男性の着ている服が、とある私立高の制服だということに――
男子高校生の笑顔に、胸キュンした俺って一体……
顔は多分、茫然自失状態。心の中はムンクの叫びの様相。
魂を抜かれたみたいな俺に、
「あの、喧嘩じゃないです。強盗に出くわしてしまって……」
艶のあるバリトンボイスの男子高校生が、おずおずと話しかけてきた。俺は慌てて、気持ちを刑事モードに変換する。
「君、強いんだね。その強盗、伸びちゃってるよ」
そう声をかけると、ハッとして絞めていた腕を離した。
「やべっ! やり過ぎた……」
「悪いことをしたんだから、多少のお仕置きは必要さ。お手柄だったね高校生!」
俺は笑いながら、男子高校生の肩をポンポン叩いた。なのにどこか困った顔をしているので不思議に思い、小首を傾げるしかない。
「謙遜するなんて、珍しい高校生がいたもんだ。遅ればせながら俺は、こういうモノです」
そう言って胸ポケットから、黒い手帳を見せた瞬間、男子高校生は緊張感を漂わせた。
「そこのコンビニから通報あってね。ちょっと前に、近場のコンビニも強盗に入られてたから、捜査していたんだ。いやぁ、ビンゴビンゴ」
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