I fall in love:運命的な出逢い

6/18
前へ
/86ページ
次へ
「翼くん、警察官にならないかい?」 「は?」 「君のように目つきが悪くて、柔道経験者なら間違いなく、刑事になれるから!」  俺が爽やかに、お誘いしたというのに―― 「あの柔道経験者といっても、実際小中六年間だけやってて、あんま強くなかったし、他にやりたいことがあるし……」 「何、やりたいのかな?」  俺の質問に困って、視線を彷徨わせている翼くん。明らかに挙動不審である。 「えっと、普通のサラリーマン。みたいな……」 「普通のサラリーマンって、どんな感じかなぁ。抽象的だよねぇ」 「別に刑事さんには関係ないでしょ。ほっといて下さいっ」  その挙動不審さが、刑事魂に火をつけるの分からないだろうなぁ。ワクワク。 「まぁそう、ツンツンしないで。あっ翼だから、これからツンって呼んでいい?」  俺の提案に、うんとイヤそうな顔をする。ぴったりなネーミングなのにな。 「イヤですよ、そんな変な呼ばれ方」 「そうだ、是非とも拒否りなさい少年。こんな変人に引っかかっちゃ、人生終わりだからね」  後方からしたデカ長の声に、俺は背中に冷や汗が流れた。 「げっ、デカ長。いつの間に……」 「お前が地取りから戻ってこないから、捜してたんだボケ! 何を呑気に、少年をナンパしとるんだっ」  デカ長が俺の頭を、グーで思いっきり殴った。 「つっ、痛いなぁ。だって人手不足で困っている警察に、優秀な人材を補充出来たらいいなと、純粋に思ったんですってば」
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

191人が本棚に入れています
本棚に追加