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「翼くん、警察官にならないかい?」
「は?」
「君のように目つきが悪くて、柔道経験者なら間違いなく、刑事になれるから!」
俺が爽やかに、お誘いしたというのに――
「あの柔道経験者といっても、実際小中六年間だけやってて、あんま強くなかったし、他にやりたいことがあるし……」
「何、やりたいのかな?」
俺の質問に困って、視線を彷徨わせている翼くん。明らかに挙動不審である。
「えっと、普通のサラリーマン。みたいな……」
「普通のサラリーマンって、どんな感じかなぁ。抽象的だよねぇ」
「別に刑事さんには関係ないでしょ。ほっといて下さいっ」
その挙動不審さが、刑事魂に火をつけるの分からないだろうなぁ。ワクワク。
「まぁそう、ツンツンしないで。あっ翼だから、これからツンって呼んでいい?」
俺の提案に、うんとイヤそうな顔をする。ぴったりなネーミングなのにな。
「イヤですよ、そんな変な呼ばれ方」
「そうだ、是非とも拒否りなさい少年。こんな変人に引っかかっちゃ、人生終わりだからね」
後方からしたデカ長の声に、俺は背中に冷や汗が流れた。
「げっ、デカ長。いつの間に……」
「お前が地取りから戻ってこないから、捜してたんだボケ! 何を呑気に、少年をナンパしとるんだっ」
デカ長が俺の頭を、グーで思いっきり殴った。
「つっ、痛いなぁ。だって人手不足で困っている警察に、優秀な人材を補充出来たらいいなと、純粋に思ったんですってば」
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