191人が本棚に入れています
本棚に追加
クスリと笑ったら、苦笑いをした翼が俺の顔を見た。
「お前は重荷になんねぇよ。だって俺の……」
言いながら目を閉じて、しっかり俺の唇にキスした翼。
こ、このキスは体育館横の物置でした、あの幻のキスではありませんかっ!
嬉しくて翼の首に腕を伸ばしかけた矢先、額に掌を当てられ、強引にはがされた。
「よしっ! やる気が出たぞ。頑張らないとな」
元気よく言って立ち上がり、俺の出したダンボールから、参考書類を取り出し始めた。
そっちのやる気より、こっちのヤル気は、どうすればいいですかね? 君のキスで、かなぁりヤル気が満々なんですけど……
「あの、翼……」
「何だよ、うっさいなぁ。勉強に勤しむ受験生に向かって、変なことを言うなよ。黙って寝とけバカ水野」
先に釘を刺されてしまい、二の句が告げなくなった俺。
悶々としながら翼の後姿を見ているうちに、布団の温かさも手伝って、いつの間にか眠りの世界に導かれてしまったのであった。
最初のコメントを投稿しよう!