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切り返すように話を振ってきた上田先輩に、コクンと素直に頷いた。嬉しさで思わず、笑みがこぼれてしまう。
「山上先輩の写真持ってたら、厄除けになりそうな感じがするので、ぜひ欲しいです」
「ププッ、厄除けだってさ。さすがはお前の相棒だわ、言うことがいいねぇ」
「もっと違う、言い方なかったのかよ。マジで可愛くないな」
折角我慢して撮られてやったのに。と文句をブーブー言い出した。
参ったなぁ……一度こうなると機嫌を立て直すのに、えらく時間がかかるのだ。
「コラッ! いつまで山上とイチャイチャしとるんだ水野っ! こっちに来て、酌をしないかっ!」
いい感じに出来上がったデカ長が、上座から俺を呼んだ。
――ナイスタイミング!
「すみません。デカ長が呼んでるんで、席を外しますね……」
たじたじしながら立ち上がろうとした俺の右手を、引き留めるようにぐいっと掴んだ。
「山上先輩?」
「――お前、酒が弱いんだから呑まされるなよ。注がれる前に、どんどん酌をしていけばいいから。分かったか?」
「あ、はい。有り難うございます」
「酔っ払って寝込んだら、ここに置いて行くから」
さりげなく釘を刺して、手を離した。心配そうに俺を窺いみる視線に、胸が熱くなる。
「山上先輩も、あまり呑みすぎないで下さいね。おぶって帰るの大変なんですから」
真似をして、同じように釘を刺しておく。何だかいつもより、ピッチが早い気がするんだよな。
後ろ髪を引かれつつ、デカ長の待つ上座に向かった。
「何かお前ら、夫婦みたいだな。愛情溢れるやり取り、ご馳走さん」
上田さんが苦笑いしながら、僕と去って行く水野に、それぞれ視線を向ける。
「さっきの写真、見せてもらっていいですか?」
「なになに、自分の目で仲の良さを確認したくなったのか? よく撮れてるぞ」
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