貴方が残してくれたもの番外編~熱想~

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 さっきの一般論は、僕には出来ない。適度な放置なんて、無理に決まってる。  ――現に今だって。  話を聞きながら目の端に、水野の姿をしっかりと捉えていた。片時だって離れていたくない。僕だけを見てくれる水野を、どこかに閉じ込めておきたい。  ――永遠に水野を、独占する方法――  ひとつはアイツを殺して、僕も死ぬ……そうすれば他のヤツが、水野に触れることが出来ない。水野の心に誰も侵入することなく、綺麗なまま僕だけを想って死ぬんだ。  ――あともうひとつは…… 「山上先輩、お銚子にお酒入ってます?」  気がつくと水野が傍にいて、屈みながらテーブルにあるお銚子に、手を伸ばしていた。 「酒はもういらない。水野がいればいい」  お銚子に伸ばした手を、強引に握りしめる。  この手を離したくはない。これからも、ずっと―― 「山上先輩……?」 「僕の傍にいろ、命令だ」 「もう、呑みすぎたんでしょ。大丈夫ですか?」  心配しながらさっきと同様に、並んで座る。俺の顔色を窺うような眼差しに、テーブルの下でぎゅっと指を絡めてやった。そんな僕の手の上に、そっと反対側の手を載せる。  ――温かい、水野のぬくもり。いつもこうやって、無償の愛を注いでくれる。だから手放せないんだ。 「愛してる、水野……」  耳元で告げてやると途端に顔を赤らめさせ、忙しなく視線を泳がせた。  ――殺したいくらい、お前を愛しているよ。  水野の大きな瞳を見つめながら、先ほどの続きを考える。残りひとつの方法、それは……  ――水野に僕の命を捧げること――  そうすれば僕は水野の中で、永遠に生き続けることが出来るんだ。たとえ違う誰かと恋に落ちても、水野は僕を忘れることはないだろう。  今こうして深く愛し合えば、きっと忘れられない――  これから先、真っ黒い僕をお前が白く塗りつぶすか、あるいは僕の色にお前が染まるか分からないけれど。  愛しい気持ちと揺るがぬ想いを、この身に抱きしめて……  ――その日がくるまで僕はお前を、ずっと愛し続けていく――  おわり  閲覧ありがとうございました。
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