転:絡まる恋(続き3)

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 「江藤……ごめん、な」  そう言って補佐は少しだけ私の方に体を寄せると、手を伸ばして私の手を掴んで拳を開かせた。  折角補佐から置いた距離も、呆気なく縮められて私は止めていた涙が零れそうになる。   うっと言うのを堪えながら、補佐に握られた手を睨むように見つめた。  「手、痛めるから。握りこむな」  私の手を引き寄せると、補佐の右手に繋がれた私の左手がキュッと包まれる。  大きな手が私を包んで、温かくてその温かさが余計に涙を誘った。  「痛みを与えるなら、俺にしろ」  どうしてなんだろう。  この人のこういうところが、カッコよくて……また好きになる。  いっそ嫌いになれたらいいのに。  さっきの話で、思い切り幻滅してしまえばいいのに。  そうさせてくれないこの人が、好きすぎて嫌いだ。  それなのに握りしめられた手が解けなくて、そんな自分が情けない。  情けないけれど、私はやっぱりこの人に恋をするしかないのかって、そんな風に想ってばかりだった。  「じゃあ、補佐の手を潰すくらい握りますね」  泣きそうな顔を無理やり歪めて笑いながら言うと、補佐は温かみのある笑い声をあげて「いいよ、江藤なら」なんて言った。  その言い方があまりにも優しくて、私は流れ落ちそうな涙を止めるのが辛い。  「続き、どうぞ」  泣きそうなのを誤魔化すように補佐の言葉を受け流すと、それを気にも留めずまた過去の話が再開された。  「あぁ、そうだな」  言葉を紡ぎながら、ぎゅっと手に力を込められる。  それだけで、温もりはより一層近くなった。  けれどそれに反比例して、心の距離は遠くなっていくような、そんな気持ちに蝕まれ始めた。
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