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「それって……」
「あぁ。あいつに言われた言葉なんだ」
なんて残酷なんだろう。
補佐の苦笑いは、私の心を黒く塗りつぶして、真っ黒に染め上げた。
補佐が世迷言のようにつぶやく永遠と言う言葉が、彼女の言葉だというだけで苦しくて悔しくて痛い。
繋がれた手に力が込められなくなって抜け落ちそうになったのに、補佐がそれを止めたから、私の手は離れずに補佐に繋がったままだった。
もう離してほしいのに……それすらも叶えてくれないこの人は、あまりにも意地悪で、卑怯者で――それでも私は嫌いになれない。
わずかの力で繋がるそれを、振りほどくことすらできない。
それほど私は臆病で、補佐の気づかぬうちに心も身体も補佐に支配されていた。
「『私には、あなたとの永遠が見えないから無理。そして、私の永遠はここにはないから』って言われて……当時の俺にはさっぱり意味が分からない言葉を吐いて行った。それを最後に、恵には一度も会ってない」
「じゃあ、今は全く……」
「アイツのことは知らない。でも結婚して、離婚したって噂には聞いたけど、な」
最後の言葉に苦い顔をして、補佐は空いた手でカップを持って冷めきったコーヒーを一口飲む。
もう美味しくないそれを口につけることで、まるで自分にバツを与えているかのように見えた。
それはもう、ただ私が勝手にそう受け取っただけなんだろうけど――
「そんなことを聞いてさ。あいつが求めた永遠ってなんだったのかと思って。馬鹿なことをした償いじゃなくて……ただ、納得させたいんだ。自分を」
「自分を?」
「俺を振り切ってアメリカに行って、結婚したのに離婚した恵の……求めてた永遠ってなんだろうかって。それが分かったら、恵のこともそうだけど――」
そこまで言って言葉を切った補佐をじっと見る。
そんな私の視線を逸らすことなく、補佐はじっと受け止めてくれた。
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