転:絡まる恋(続き3)

13/37
前へ
/37ページ
次へ
 「それって……」  「あぁ。あいつに言われた言葉なんだ」  なんて残酷なんだろう。  補佐の苦笑いは、私の心を黒く塗りつぶして、真っ黒に染め上げた。  補佐が世迷言のようにつぶやく永遠と言う言葉が、彼女の言葉だというだけで苦しくて悔しくて痛い。  繋がれた手に力が込められなくなって抜け落ちそうになったのに、補佐がそれを止めたから、私の手は離れずに補佐に繋がったままだった。  もう離してほしいのに……それすらも叶えてくれないこの人は、あまりにも意地悪で、卑怯者で――それでも私は嫌いになれない。  わずかの力で繋がるそれを、振りほどくことすらできない。  それほど私は臆病で、補佐の気づかぬうちに心も身体も補佐に支配されていた。  「『私には、あなたとの永遠が見えないから無理。そして、私の永遠はここにはないから』って言われて……当時の俺にはさっぱり意味が分からない言葉を吐いて行った。それを最後に、恵には一度も会ってない」  「じゃあ、今は全く……」  「アイツのことは知らない。でも結婚して、離婚したって噂には聞いたけど、な」  最後の言葉に苦い顔をして、補佐は空いた手でカップを持って冷めきったコーヒーを一口飲む。  もう美味しくないそれを口につけることで、まるで自分にバツを与えているかのように見えた。  それはもう、ただ私が勝手にそう受け取っただけなんだろうけど――  「そんなことを聞いてさ。あいつが求めた永遠ってなんだったのかと思って。馬鹿なことをした償いじゃなくて……ただ、納得させたいんだ。自分を」  「自分を?」  「俺を振り切ってアメリカに行って、結婚したのに離婚した恵の……求めてた永遠ってなんだろうかって。それが分かったら、恵のこともそうだけど――」  そこまで言って言葉を切った補佐をじっと見る。  そんな私の視線を逸らすことなく、補佐はじっと受け止めてくれた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

275人が本棚に入れています
本棚に追加