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初めてのことに戸惑いながら、ぼんやりとカーテンを閉めていない窓を見ると、さっきつけた家の明かりに反射して瞼の腫れた酷い顔の自分が写っていた。
「きったない顔」
フッと自分の顔に笑ってしまって訳もなく口角が上がると、面白くもなんともないけれど少しだけ気持ちが浮上した。
目、冷やさなくちゃ……
立ち上がる気力なんて湧かないけれど、明日こんな顔で会社に行ったら補佐がどう思うかと想像したらこのままにするわけにもいかないって思った。
どうしてこんなになってまだ、浮かぶのが補佐のことなんだろう。
自分でも馬鹿だなって笑ってしまう。
私は勢いよくベッドから立ち上がった。
冷蔵庫に向かって歩くうちに、昔真子にもらったアイマスクを冷蔵庫に冷やしたままだったことを思い出す。
目が疲れてるな……なんて感じたこともない私は、貰ったままに放ったらかしだったけれど、今こそ役立つ時かもと思いながら冷蔵庫の奥底に眠らせたままだったアイマスクを引っ張り出した。
「つっめたー」
早速ベッドに寝転がってアイマスクを付けると冷たさにギュッと目を閉じた。
ラベンダーのいい香りが漂ってきて、リラクゼーション効果を感じる。
真子が折角くれたのに、蔑にしたまんまで悪かったな――なんてどうでもいいことを思っていたら静寂を切り裂く音が鳴り響いた。
「携帯……」
多分、リビングに放りっぱなしになってる鞄の中に入ったままの携帯電話。
今リラックス中なのに、電話を取りに立ち上がることがとてつもなく面倒くさい。
今日くらい無視したって罰もあたらないでしょ?
それに――ガッツリふられた私に、これ以上の厄災も起きようがないって自虐的に思う自分もいた。
だから無視を決め込んだんだけど……
「しつこっっ」
鳴り止まない携帯電話に根負けして、渋々立ち上がった。
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