転:絡まる恋(続き3)

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 立ち上がってしまえば、今度は急いで取らなくちゃと思うのが人間だったりする。  もしかして補佐なんじゃないか? なんて馬鹿な期待まで湧いてきてしまった。  一度湧いてしまった期待は消せるはずもなくって、そうなると1秒でも早くと、気持ちが急いてきた。  慌てて鞄を漁り、携帯電話の液晶画面を見る一瞬前になって気づく。  もしこれが補佐だったとして、私は何を言えばいいんだろうか――なんてことを。  言いたいことも、聞きたいことも、今は全く何もない。  むしろ顔を合わせることも声を聴くことも、どれも怖い。  ギュッと目を瞑ったけれど、その一瞬で鳴り止むこともない携帯電話を意を決して見てみると、私はほっとして受話ボタンを押した。  「萌優、今いい?」  昨日と全く変わらない優しさを孕んだ、今はドS降臨中ではない様子の八重子先輩からの電話だった。  「せん、ぱ……」  一人で泣いたままだった私は、上手く声が出せずに『ぱ』の言葉で声が掠ってしまう。  でも私の声を気に留めた様子もない八重子先輩は「あんた今、家に居る?」って続けた。  「は、い。居ます、けど」  「ん、了解」  ツーツー……  ――ん!? 切れました!? なんで!?  意味不明だと思って液晶画面を見るも、明らかにそこは待ち受け画面に切り替わっていて、どうやら八重子先輩との通信が絶たれたのは、間違いではないようだった。  ――なんだったんだろう、一体。  と思った直後、着信音よりは優しめの音色が室内に広がった。  ピンポーン、ピンポーン  明らかに、ドアベルが鳴っている。  「まさか、ね?」  ベルの音にビクッと震えながら玄関の方に視線を向ける。  けれど今の不細工な顔を理解しているからこそ、誰とも見当がつかない相手のために立ち上がれない。
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