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昨晩、卵があることだけは確認していたのと、意外にもご飯だけは冷凍して置いてあったのを発見した私は、卵雑炊を作成した。
といっても野菜も何もないので、卵粥としか言いようがないんだけれど。
すっかり回復した様子の補佐は、
「美味い。江藤いい嫁になるよ」
なんて、さっきの冗談を今頃返してるつもりかなんなのかさっぱりわからないことを言う。
「おだてたってなにも出ませんから」
私はその言葉を軽く流して、補佐が差し出した椀にお代わりをついだ。
結局、作ったほとんどを補佐が食べ、私はちっとも食が進まずに3口食べて水を飲んで終わった。
これからいよいよ話が始まるのかと思うと、モノが喉を通らない。
いつの間にか黙ったまま俯いて座っていた。
食べ終わった後、なんとなく沈黙が続いて「コーヒー飲むか?」って尋ねられた声でようやく顔を上げる。
「あ、私やります」
「いやこれくらいは……」
「いいですから」
強引に補佐をキッチンから追い出して、コーヒーの場所を尋ねてからお湯を沸かした。
その間に食器も下げて、洗ってしまう。
淹れてからソファーに腰かける補佐の元へと持っていくと
「悪いな……」
申し訳ないって感じの顔をして、補佐はコトリとカップをテーブルに置いた。
私はカップを置く様子を見ながら、20センチほどの距離を置いてソファーに座った。
自分のカップもテーブルに置くと、はぁーっと横で息を吐く補佐。
そのため息に、いよいよかと心臓がドキドキし始めた私は、落ち着かなくてまたカップを手に取って一口コーヒーをすすった。
言うなら早く言ってしまって、なんて思う気持ちと、何も言わないでって気持ちとでいっぱいになりながら膝頭を見つめる。
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