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『もーゆー!』
しかし、玄関から大声で私を呼ぶ声が聞こえてきて、私は慌てて走り出した。
間違いない――先ほど通信を絶ったはずの先輩は今ドアの前だっ!
パタパタっ
走ってガチャガチャとカギを開けようとすると、それを待たずして恐ろしい声が飛んできた。
「早く開けなさい!」
「た、只今っ!」
ひぃいいっ! と心の中で叫びながら、扉の向こうにいるのは優しい先輩じゃなくて、鬼か何かじゃないかと思いながら慌ててカギを開ける。
さっきまでは穏やかな八重子先輩だったはずだ。このままドSな八重子先輩を降臨させるわけにはいかない!
私が必死の形相で扉を開けると、どうにか間に合ったのだろうか。
「飲むわよ、萌優」
にっこりと微笑む八重子先輩と
「来ちゃった」
これまたにっこり笑う真子が立っていた。
「え……?」
突然の来訪に驚きが隠せず立ち尽くす私を押しのけて、先輩は自分の家のように平然と上がり込む。
「はい、退いて。邪魔よ萌優」
私の記憶する限り、八重子先輩が家に来た記憶はない。
だとすれば、真子に連れてきてもらったのだろうか?
それにしても、そこまでしてわざわざ私の家になぜ来たんだろう……混乱したままの私は、ひとまず二人を家に招き入れた。
「ふーん、結構いいとこね」
私の部屋をぐるりと見渡して『私ココ』と言いながら、八重子先輩は嬉しそうにミニ座椅子に座った。
どうぞ、とも何も言っていないのに勝手に座っておきながら「小さい、コレ」と文句を垂れている。
さすが八重子先輩、いろいろ強者ぶりを早くも発揮している。
妙な感心を抱いていると、もう一人の強者が声を上げた。
「萌優、氷冷凍庫入れさせてねー」
言いながらすでに勝手に冷蔵庫を開けて、グラスを引っ張り出しているのは真子だ。
――なんなんだ、この自由人二人は!!
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