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まだ状況把握しきれない私は、混乱して家のど真ん中あたりで突っ立ったまま。
そんな私を見かねてか、足を組んで最早女王様かのように見える先輩が私に指示を出してくれた。
「アンタは、コレつけて横になってなさい」
携帯を取るのに必死で、放り出したままのアイマスクを手に持ち、先輩はそれをぶらぶらさせた。
「は、はい」
――なんかよく分かんないけど、いいや。
少しぬるくなったアイマスクを受け取ると、それを目の上に乗せて、指示通りゴロリと横になった。
「可愛い顔、台無しにしちゃだめだよ、萌優」
柔らかな先輩の声が聞こえてきて、私の頭をさらりと撫でる。
その言葉と柔らかな手で分かった。
……どうしてこの人たちって、こうなんだろう。
そう思ってボロリと止まったはずの涙がまた零れる。
「こら、泣くな萌優」
「だっ、ってっ、ヒクッ」
「明るく飲みに来たんだから。いつまでも泣きはらした顔してんじゃないわよ」
「ふっ、うぅ……っ」
二人は私が心配で来てくれたんだってことに、やっと気が付いた。
だから無理やり押しかけてきて、いつも通りを装って振る舞うんだ。
でも、分かる。
先輩の優しさを孕んだ声と、優しく私の頭をなでる温かな手。
元気出せって。
私たちがいるよって。
そう言ってる。
それが分かって涙が出た。
さっきまでのわけが分かんないぐちゃぐちゃの意味の涙じゃなくて。
純粋に二人の気持ちが嬉しくて出る涙。
どうしてこんなに二人が温かいのかと、私は今さらながらだけど……傍に居てくれる二人に感謝した。
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