転:絡まる恋(続き3)

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 二人の瞳から逃れるように俯く私に、八重子先輩はポテトチップスに手を伸ばしながら教えてくれた。  「トキ兄からね、連絡あったんだよね。萌優が多分泣いてるから、会いに行ってくれって」  「え……」  八重子先輩の言葉に驚きすぎて、声が出ない。  ――今先輩が言ったことは、本当?   「心配してたよ、すごく。俺の前で泣くような奴じゃないから、行ってやってくれって。ほーんと男って馬鹿じゃないの? とか思ったんだけど。萌優が心配だから来ちゃったのよ」  補佐が、八重子さんにそう言ったの?  でも……どうして、そんなことするんだろう。  どうしてそんな、妙に優しいことするの?  「どして……」  「ん?」  「嫌いにならせてくれないんですかね?」  私は顔をまた歪めて、手で覆った。  ただ、また泣きたくはなくて、目をぐっと手の平で押さえる。  もうこれ以上、補佐のことで心を乱されたくないって思う気持ちがある。  でも勝手に乱されていくんだ。  その度にグッと我慢するのに、涙腺が弱いのかすぐに涙が込み上げてきてしまう。  「大事なんだよ、萌優のこと」  真子がそう言って私の肩を抱き寄せてくれた。  「私、振られたのに?」  喉が引きつりそうになりながらもそう言うと、真子が背をさすりながら温かい声で教えてくれる。  「大事なことと、付き合うかどうかってのは別じゃない」  「じゃあ、私が、部下、だから?」  泣きたくなくて一言一言をゆっくり口にする。  そんな私に合わせるように、真子もゆっくりと言葉を紡いでくれた。  「それもあるかもだけど……多分、それだけじゃないと思うよ私は。だってさ……トキ兄、昔から萌優にはちょっと違うじゃない?」  「昔から、違う?」  真子の言う意味がよく分からなくて、私はぐすっと鼻を鳴らしながら真子を見つめた。
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