転:絡まる恋(続き3)

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 そんな私の顔を見て真子はクスリと笑う。  その柔らかい笑い方が、まるでお母さんみたいだなんて思った。  「気づいてないの? あの夏季合宿の時、トキ兄の隣に居た女の子って萌優だけだよ」  「え?」  「気付いてなかった? トキ兄ってさ、女の子とはあんまり話もしなかったよ。だから私の中ですっごく記憶が薄いの」  「うそ……!」  「ほんとだって。私、なんであんな人を萌優が好きって言ってるのか分かんなくて、結構見てたんだよ遠くから。そしたら分かりやすいくらいにトキ兄って萌優にばっかりちょっかいかけてるの」  「うっそだぁ」  そんな馬鹿なって思いで真子を見つめるけど、ふふふって笑われた。  思い返してみても、近寄って行ってたのは私だと思うけど……?   「あー、確かにそうかも」  真子に賛同するように八重子先輩までそんなことを言い出して、私は驚いて目を見開く。  先輩まで、私を何かに嵌めようとでもしてるの!?  「昨日、言ったでしょ? 遊びまくってたらしいって。私その当時、海人からその話を聞いてたけど、全然ピンと来なくて。っていうのが、トキ兄ってホントに女の人と一緒に居たの見たことなかったんだよねぇ。  だからあの時の合宿で中学生の萌優とは言え、女の子の隣にベッタリ引っ付いてるトキ兄を見てびっくりした記憶あるかも」  「へっ?」  「本人も気づいてないのかもね」  しれっとした顔で八重子先輩はそんな爆弾を投下しておきながら、ぷしゅっと新しい缶に手を掛けた。  こっちはそれどころじゃないのに、二人からそんなことを言われてお酒とは別に顔が赤くなっていく。  手のひらをぺたりと両頬に当てて熱を逃してから、何となく恥ずかしくてするめいかをガジガジ噛みながら立てた膝に顔をうずめた。
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