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「『相変わらず江藤って似てるんすか』って尋ねたらしいの。アイツ馬鹿だからさ。萌優とトキ兄が仲イイの見て、まだ引きずってるせいなのかなって思ったらしくて。しかもそれをストレートに質問したらしいのよ」
うっわー、大迷惑な人だ。
海人さんめっちゃいい人で好きなんだけど。
たまーに、おせっかいが傷ですぜ? なんて心中でこれまた突っ込んだ。
「そしたらさ、なんて言ったと思う?」
「へ?」
「トキ兄よ」
まさかここで私に振られると思ってもなかったので、思わず真子を見た。
でも真子もプルプルと顔を振るだけで、答えに見当はつかなさそうだ。
私も、うーんと言いながら悩んだふりをしたけれど、会社妻とまで呼ばれているとはいえ、素のトキ兄に関してはからきしダメだと思って首を振った。
「『アイツの声とは全然違う。江藤も女になってさ……多分、ずっといい声してるよ江藤の方が』だぁって!! やばくない!?」
八重子先輩のテンションと、その内容とで私は真っ赤になった。
――いい声してるよ、江藤の方が……って、誰が言ったの!?
半ばパニックを起こした私の口は半開きで……とりあえず落ち着くためにまた缶を握ってコクっと一口お酒を飲む。
「いい声って、やらしいですねトキ兄……」
なんて真子が恥ずかしい突っ込みを入れるから、私はマンガみたいに「ぶ―――っ」って口に含んだばかりのお酒を豪快に噴出した。
「ちょっ、萌優汚いっ」
真子が慌てて自分の顔を布巾で拭きながら私に文句を言う。
「いや、真子が悪いと思うよ?」
八重子先輩がフォローしてくれた。
当たり前だ。
「やらしいとか言う真子が悪いの!!」
私は言いながら恥ずかしさがこみ上げてきて、また赤くなった。
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