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しばらく恥ずかしさとの葛藤で俯く私。
今日は気持ちが浮上したり、落とされたりの連続で、心がジェットコースター級の活動をしている。
あーだ、こーだとまた言い合う二人をぼんやりと見ながら、私はだんだんと気持ちが落ち着いてきて、ふーっと息を吐いた。
うん、なんか、いいや。
そんな風に、気持ちが凪いでくるのを感じた。
「先輩、真子。ありがと」
ぽつりとそう漏らすと、二人はピタッと固まって私を見た。
「今日、二人が来てくれて助かった。私、頑張るから」
「「萌優……」」
二人の声も、優しい眼差しも。
決して演技ではなく重なって、私は嬉しくて緩く口角を上げた。
自然に、わざとじゃなくて。
心から落ち着いたからこそ、自然と笑っていた。
「私ね、ただ想うだけでいいって始めた恋なの。だから、いいんだ――今のままで」
「萌優、それは辛い、よ?」
八重子先輩が切ない瞳をしてそう言う。
まるで自分が辛かったかとでも言うかのように。
「いいんです。それでも。それにずっと続くかどうかも分からないし。ただ―――今すぐ諦めることも、変な期待をすることも止めて。とにかくゆっくり消化しようと思って」
声に出して気持ちを打ち明けると、やけにすっきりとした。
そう、ゆっくりと『消化』させればいいのだ。
八重子先輩が、期待を持たせたくてさっきの話を私にしてくれたんだと思う。
でもそうじゃなくて、私は私なりに、ゆっくり消化させようと思った。
それは――私自身にただ想い続ける根性がないことと。
過去に囚われたままの補佐の中に潜む彼女の存在に、勝てるとは思えない自分の弱さがあるから。
それに打ち勝つ勝算も無ければ、闘う度胸すらも私にはない。
だからせめて、自身の手でゆっくり消化させようって思った。
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