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「私、いつかまた、新しい恋見つけるよ。今すぐは無理だけど」
にこりと笑って、私は二人をしっかりと見つめた。
八重子先輩の話で少し思い出したことがある。
喫煙所でコーヒーを飲みながら隣に座った時、あの時補佐は私の髪に触れて……こう言ったんだ。
『もう、大人。だろ?』
切なさを滲ませた瞳で私を見つめていた。
その表情が切なくて、私はギュッと胸が痛くなったんだ。
どうしてなんだろうってあの時思った。
でも今なら分かる。
最早私には、彼女の面影なんてなくて。
だから、面影のない私を悲しく思ったんだ。
『もう中学生じゃないんだな』
続いたその言葉が、それを裏付けているようにすら思える。
彼女に――木橋恵さんに、似たところのない私なんて、用がない。
そういうことなんじゃないかって考えれば、何もかもぴたりと当て嵌まった。
もしかしたら、結婚して離婚したっていう話すらも、補佐にはまだ挽回の余地があると思っているって言う遠まわしな牽制だったのかもしれない。
そうは言いながらも私は……多分ずっと、補佐のことを私は消化できない。
初恋はトキ兄だった。
二度目の恋は補佐だった。
そして二人は同一人物だ。
8年経って、同じ人しか好きにならないなんてどうかしているとしか思えない。
22年生きてきて、とんでもない経験値の低さだ。
まともな彼氏は出来ないし、同じ人しか好きになっていない。
こんなロクでもない女になんて、まだまだいい人なんて見つからないんだきっと。
補佐への想いはなかなか消化できるようには思えないけれど。
それでも一歩、気持ちの面で進めたような気がした。
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