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『ゆっくり消化します』
そう宣言にも似た誓いをした私を、八重子先輩はにやりと笑って見た。
『あの堅物に一芝居打とうか?』
とんでもなく危険なその申し出を、必死で止めてください! って叫んで止めた。
そんなこんなでワイワイ騒いでいたら、終電ギリギリの時刻になって二人は帰っていった。
一人になった部屋は寂しかったけれど、補佐の家から飛び出してきた時の私とは全然違っていて、悲しい気持ちは少し治まっていた。
それに……二人のお蔭で、私は一人じゃないんだって感じて、どこかほっこりしていた。
翌朝目覚めると、あんなに腫れていた目はなんとか化粧で誤魔化せる程度には落ち着いていた。
落ち込み過ぎていた気持ちも、寝てすっきりしたせいか随分払拭されている。
本当に八重子先輩と真子には頭が上がらないな――と二人に感謝しつつ、少しだけ重い足をなんとか一歩踏み出して会社へと向かった。
まだ足取り軽く、は無理。
だけど、前へ踏み出せる力は戻っていた。
それは本当に二人のお蔭だって感じながら、一歩一歩を踏み出していく。
もし補佐と別れた後、昨日一晩一人で過ごしていたとしたら会社になんか行けなかったって思う。
海人さんのあの一件以来の、2度目の有休を使ってたかもしれない。
でもそれは補佐を苦しめてしまいそうで……だから、出勤できた自分にホッとした。
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