転:絡まる恋(続き3)

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 「真面目にあのころは続けたいと思ってた」  「演劇を?」  「あぁ。なぜか中学の時にたまたま入部しただけの演劇だったのにな。まぁ……今はもうただの趣味だけど」  なんてことないようにそう言ったけど、多分ほんとは苦渋の決断をしたんだと思う。  一度スポットライトを浴びたら、それを断ち切る選択をすることがどれほど辛いものか、私にだって分かる。  2年前、劇団を解散した時の苦さをリアルに思い出して、自然と顔が歪んだ。  揉めて、何度も話し合って、何人かは別の劇団に移ったり、はたまた芸能界進出を目指したりと最後はドタバタしたものだ。  本当に趣味程度の私ですら、自分の所属する劇団が無くなると言う事態はかなり辛いものだったのに、芸大にまで言った補佐が舞台に立たない選択をしたのは、本当に辛かったのではないかと思った。  「同じものをみんなが目指した場所で再会した俺たちは、仲良くなるまでに大した時間はかからなかった。まるで、今までも付き合いがあったのかってくらいに波長も合った。毎日が楽しかった、あの頃はとても」  どうしても気になって少しだけ隣を見ると、懐かしさに浸る表情をしていた。  その懐かしむ顔には、私のことなんて一切含まれていない。  そんな些細なことですら悔しい――そして辛い。  だって私は当時、まだ小学生だったから仕方がない。  今まで意識を向けていなかった越えられない年の壁を、猛烈に意識した。  「当たり前のように想いを寄せていて、当たり前のように隣にいた。だから俺は……切り出すタイミングが掴めなかった」  「タイミング?」  「告白……出来なかったんだ、ずっと」  聞きたくない話だけれど、過去と割り切って聞こうと努力して、なんとか合いの手を入れた。  それに、この話には思い出す言葉がある。
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