転:絡まる恋(続き3)

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 八重子先輩に補佐が言った、あの言葉。  『他人に言われた方が動けるってこともある。タイミングって大事だし、な』  あの言葉は、やっぱり補佐自身の過去の体験だったんだなって、一人で納得した。  「どうしようか、そう考えてるうちに厄介なことになった。俺自身がモテ始めてしまったんだ」  「は? えーっと、自慢……ですか?」  突拍子もない話に、私は思わず突っ込んでしまった。  って、普通突っ込むでしょ?  自分で自分がモテたんだ、なんて言い出したら。  これがもし真田君だったら、確実に『馬鹿じゃないの!?』って言いながら頭を叩いてる。  まぁ、補佐が言うとそんなこともあったのかって納得してしまう部分もあるけど。  でも……そんなこと、言う人だったのか。  少しショック、なんて思いながらじと目で補佐を見た。  「理由があるんだ。俺がモテた……いや、俺に媚を売りに来る奴が増えたわけが」  「媚……?」  慌ててモテた発言を否定するような説明が入ったけれど、さっぱり話が見えなくなってきた私は、訳が分からずに首を傾げた。  固唾を飲んで続きを待つと、補佐は私をちらりと見て苦笑する。  「脚本演出を俺がやるって言って、学内で小さな劇団を立ち上げたんだよ」  「脚本演出を……!? すごいですね」  「すごくもなんともない。やりたいことをやってみたかっただけで、俺は何もすごくない。でもそれが大失敗だった」  また顔を曇らせた補佐は、私とは目を合わせない。。  「いい役が欲しくて、みんな食いついてきたんだ。俺に」  「役……?」  「芸能人みたいな話だろ。でもみんな本気だった。  丁度その劇団の初公演を学校側の50周年式典に参加させてもらえることになった。俺の居た芸大からも過去に芸能界入りした先輩は多い。だからそう言う大掛かりな式典なんかは割とテレビ局がたくさん来る方なんだ。勿論、芸能プロダクションのスカウトもな」
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