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演劇に狂い過ぎたみんなが、どんどん壊れていく。
ただやってみたくて立ち上げた補佐の劇団。
それは恐らく、ある種趣味のような感覚で立ち上げたんだろうと思う。
それなのに式典に参加出来る話が湧いたばかりに、みんながそれに踊らされた。
その話が切なくて、涙が出そうになる。
演劇は、そんなものじゃないのに……どこで人は狂っていったんだろうか。
「そうやって本番を迎えるころには、確実に恵は俺に嫉妬していたと思う。それを明らかに感じられて俺は大満足だった。そうやって終わった後、ようやく彼女に言う決心がついたんだ」
決心がついた、の言葉にドキリとして顔をまた補佐に向ける。
けれど無言で頷くだけで、一瞬静かな時間が流れた。
わずかな時間静寂が広がって……止めていた息を吐きだすように補佐はまた口を開いた。
「恵、付き合おうって。でも俺はどこまでも馬鹿で。こんなときですら横柄な態度にしか出られなくて。それで断られた」
「え……?」
「言うのが遅すぎるって。思わせぶりな態度ばかりを取り続けた俺に、最初は嫉妬してたはずがいつの間にか怒りになって……アイツは他の奴に目を向けた。俺を、諦めたんだ」
「そん、な……」
「自業自得、だよな」
ほんとに馬鹿なことをしたんだと言わんばかりに、補佐はため息をついた。
でも、同情の余地がない話に私も何も言えずに俯いた。
どう聞いたって、補佐が何もかも悪いと思う。
いくら私が補佐を好きでも、その時の彼のことをフォロー出来なかった。
無言で俯く私に、補佐はははっと空笑いをする。
「ま、何も言えないよな」
ポツリとそう零しながら、私の方を見ようともせず大きく息を吐いていた。
「話、続けていいか?」
「……どうぞ」
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