31人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「うそっ」
そう声をあげた。
「また、どうした?」
俺は心配してきくと、真剣な顔で、
「先生ここから家まで何分ですか?」
ときいてくる。
「ん~30分くらいかな」
いや15分くらいで着くかもしれない。でも信号にかかったりしたら20分、30分はかからないか。
きっと時間を見たのだろう、もう遅い時間。
木下はとても静かで、もしかして親に怒られるんじゃないか……。
(そうだよな……もう朝方だし。俺ダメ先生じゃん)
「怒られるのか?」
「多分……」
俺が親だったらカンカンだ! と考えてると。
「先生、私が帰りたくないって言ったらどうします?」
と聞いてくる。
いきなりどうしたのか、木下らしくない、もう酒は抜けているはず、
(俺をからかって遊ぶ気だな)
「帰ろうって言うかな」
そう言うと、ちょっとガッカリした顔をした。
(どういう事だ……? もしかして木下は……)
自意識過剰かもしれないが、そう思った。
「ははっだよね。先生急いで、父さん起きちゃう」
(まさかな! 先生だから甘えてんだよな!!)
「はいはい」
――家の近くで降ろした。家の前まで送るといったが、木下がそうして欲しいと言ったからだ。
「先生、ありがとうございました」
いつもの笑顔、今日はいっぱい動いたから疲れてるはずなのに、全然疲れを感じない。
「じゃあ~な」
木下の笑顔が薬なのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!