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――修了式の日。
今日でやっと忙しさから解放される。そう俺は喜んでいた。
終了式は案外早く終わり、教室で通知表を生徒に返し、簡単な挨拶をして終了。
やっぱり『羽目をはずさないように』という言葉は、長い休みの前は、どの先生も必ずいう。
あえて俺は言わないけど……。
生徒たちは帰り際に、別れを惜しんでいたり、明日から休みなので元気な奴等もいた。
今日で今年は木下も見納めかもなぁ、なんて思いながら、思わず見てしまう……。
友達と楽しそうにしている木下は生き生きしていた。
「あの……」
いきなり俺は声をかけられ、すぐに木下から視線を外した。
生徒がポツポツと帰っていく中、側には安達早紀が立っている。声をかけたのは彼女らしい。
「どうした?」
「ちょっと話しがあるんですけど、来てもらっていいですか?」
「あぁ」
とりあえず、安達の後をついていく事に、向かってるのは屋上だった。
(なんだろう?)
真面目な安達が俺になんの用なのか、木下に夢中の俺は、最近感覚が鈍っているようで、いつもなら気付くはずなのに、今回は全然気付かなかった。
安達はクラスをまとめる優等生。
(なにかあったのか?)
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