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やがて麻酔から覚めた孝之が
ゆっくりと瞼を持ち上げる。
うつろな瞳がゆらゆらと
彷徨った後、微かに細められ
私の姿を捕えて行く。
「孝之っ…」
思わず名前を呼んだ私の声に
孝之の眉がピクンと
小さな反応を示した。
「…どこ…?」
掠れた声が紡いだ疑問に
私は慌てて涙を拭いて
孝之の手を握りしめる。
「病院だよ。
20号で正面衝突されて…
いっぱい怪我したの。
だけどもう大丈夫って…」
息苦しさを抱えながら
やっとの思いで孝之に告げると
彼は静かに瞼を閉じた。
「…良かった…」
「えっ?」
「…紗枝がいてくれて」
そう言ってやんわりと
微笑んだ孝之に、
私の心は激しく締め付けられる。
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