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「当たり前でしょう?
私は孝之の妻だよ?」
慌てて言った私の手を
孝之の手がぎゅっと
握り返してくれて、
その力強さにまた、
はらりと涙が零れ落ちて行く。
「孝之…生きててくれて
ありがとう…」
一番彼に伝えたかったのは
やっぱりその言葉だった。
それを聞き届けた孝之は
再び瞼を開いて
もう片方の手をゆるゆると
私に伸ばして来ると
親指で涙をすくった。
「言っただろ…。
俺は紗枝を残して
死んだりしないって」
柔らかい笑みと共に
言われた言葉で思った。
両親の死を引きずっている
私を分かってくれている彼は
自殺行為なんて絶対にしない。
迫り来るトレーラーを
避けなかったのではなく、
避けられなかっただけだ。
そう思ったのに…。
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