*…愛しくて…*

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手の中でふるえる携帯。 シンは黙って見つめていた…。 (今とったら確実に会いたいと言ってしまう…) シンは取るのをやめた。 亜紀の声を聞くと、絶対に自分は“会いたい”と言ってしまう…。 そんな弱い自分を、会いたいという欲望を押さえるには、この方法しかなかった。 静かになった携帯…。 するとまたかかってくる。 その度に取りたいと言う衝動を押さえた。 (もしかして…何かあったのか…) と悪い事も頭をよぎる。でも取らなかった。 2、3回かかってきて携帯は静かになった。 (ごめん…亜紀…) と携帯を見つめていると、また携帯がふるえる。 それは亜紀からではなく、工藤みきからだった。 工藤みきは亜紀の親友。 その時にシンは、もしかして本当に何かあったのか?と不安にかられ電話を取った。 「もしもし!」 と電話を取ると、 “心先生ぇ~。みきですけど!亜紀と屋上に閉じ込められちゃって…屋上から出れません。” と言う電話だった。 だから亜紀から何回も電話が来たのか、と理由がわかり何もない事に安心した。 「閉じ込められたのか?今から行くよ」 と電話を切りシンは鍵を取り屋上に向かった。 (鍵を開けたらすぐに戻ろう…。) そう考えて。
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