*…愛しくて…*

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亜紀の顔を見る事が出来ない。 亜紀も木下と呼ばれた事に動揺していた。 「早く帰りなさい。」 そう言う事しかシンには出来なかった。 本当は今すぐにでも…抱き締めたかった。 (亜紀のため…亜紀のため…) 「先生、どうしちゃったんですか?」 と聞いてくる亜紀。 「どうもしてない。早く帰りなさい…。」 冷たくする事でしか…自分の欲望を抑えきれない…。 すると亜紀は、 「先生、なんで私の事みないの?昨日も、なんで無視したの?」 と言った…。 「…。」 何も言えない…。 今振り向けば…亜紀を抱き締めてしまう…。 「先生…。」 と呼ぶ愛しい人…。 (呼ばないでくれ…) シンの心は今にも崩れていきそうだった。これ以上一緒にいたら。 (俺は、自分を止められない…お前を苦しめる) 「早く帰りなさい。」 心が苦しかった…。 「先生…なんで…?」 と…声が震えている亜紀に、シンは、 「帰れよ…。」 と冷たく言い放った…もう限界で…。 君の事を…求める気持ちを抑えるために、君に冷たくあたる事しか出来ない。 シンの言葉に、亜紀は屋上から飛び出していった。
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