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「赴任先はどこなんだ?」
そう聞いてくる相沢に、シンは沖縄だと伝えた。
なんとも言えない、重い空気が流れる。
相沢は静かにビールを飲みながら、何か考えている。
どれくらい2人の間に沈黙がながれたのか、重い空気がそれを長く感じさせた。
「木下には、言ったのか?」
そう聞いてくる相沢に、シンは首を横に振った。
それを見て、
「いつ言うんだ」
と聞いてくる相沢の顔は、少し眉間に皺がよっていた。
「亜紀に伝えたら、俺は赴任をおもい止どまるかもしれない」
シンは拳を握りしめていた。
「亜紀がもし嫌だって言ったら、俺は……赴任しないかもしれない。もし泣いたら、離れられなくなる」
亜紀が好きだから……。シンは亜紀には言えずにいた。
君の悲しむ顔が見たくなくて……。
君の泣く顔がみたくなくて……。
「自分でも、言わないといけない事は分かっている。でも、言ったら……」
シンは唇をかみ締めた。
そして、
「亜紀に言ったら……。俺は、また亜紀を凄く苦しめる……」
この選択をすると言う事も、亜紀を苦しめるとわかっていた。
でも、絶対に亜紀に告げると、止められると思った。
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