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亜紀の気持ちが、悲しいと言った事が、気持ちを苦しくさせた。
言わなかった訳じゃない、言えなかった訳じゃない。
もう、シン自身がその記憶を思い出したくなくて、心の奥に閉まっていたんだ。
なかった事にしたくて、思い出したくなくて……。
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件名:ごめん。
本文:今日ちゃんと話すから、夜電話するから。
ごめんな。
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そう、亜紀に返信した。ちゃんと話さなくてはいけない、これから先……きっといつかこの話題に、嫌でも触れる事になる、それなら今のうちに……。
(なぁ亜紀、俺を救ってくれ。お前だけは、遠くにいかないでほしい)
誰かを失うという事は、とても悲しい事で、それだけでは収まらない。
誰かを失って、『悲しい』と思うのは、『悲しい』しか言えないこの喪失感と、自分自身にそう言わせる事で、少しずつその人がいないんだと、実感させていくものなんだと、シンは感じていた。
『悲しい』その言葉は、たやすく口にできるもので、碇の様に心という大きな海に、重く沈む。
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件名:RE:
本文:別に話したくなかったら無理に話さなくていいよ。
なんか、私が無理矢理言わせてるみたい。
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なぁ君は、俺の気持ちを少しでも、軽くしてくれるのだろうか……。
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