12人が本棚に入れています
本棚に追加
*…碇…* #2
「ここはどこだ……」
ポツリと出た言葉。何処か分からないこの場所……辺りを見渡しても、希望の光なんてない。
「また1人になるのか……」
何故そう声を発したのか、自然にでてきた言葉は静かに消えていく。するといきなり、
『先生? いけないんだぁ~』
その世界にこだまする、誰か分からない幼いだろう女の子の声……。どこから聞こえてくるのか分らない声を、全身で感じた。
『生徒に手ぇ~出したらいけないんだよぉ』
辺りを見渡しても誰もいない。自分以外なにも、誰も居ないんじゃないかと思うような世界。
『離れたからって、現状はなんにも変わってない。
貴方は結局、大切な人を苦しめてるんだから』
そう言い、クスクスと笑った。
「俺は……」
胸が苦しくなる。声に反応しているのか、この分らない場所が怖いのか……。
(俺は、やっぱり亜紀を苦しめているのか……ここはどこだ)
『先生、貴方は……本当にあの子が大切なの?』
「あぁ」
『そうなんだぁ、じゃあもう一回何が正しいのか考えて見たら?』
挑発するような声、そう言われて、シンは夢から覚めた。
カチカチとなる時計の針の音。
暗い部屋……額に滲む汗。
(なんなんだ……)
そう呟いたシンは、額の汗を拭った、頭の中では色んな事が交差していた。
最初のコメントを投稿しよう!