*…優…*

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 シンは今までにない程、心が満たされている事に気付く。  この懐かしい感覚……。 (俺は……)  自分はやはり、家族のあの温もりや、存在が欲しかったのだと、気付いた。  ただ1人、優だけが自分の家族……。 「なぁ? 何だまってるんだよ」  優の声に、自分の世界からひきもどされた。 「あぁ、ただなんとなく」 「意味わからん」  優に、家出した理由を聞かないでおこうか……そう考えてしまう自分がいた。  このまま、優を黒木さんから奪えるんじゃないか……そう考える自分がいた。  必ず連絡させる。そう約束したが、その約束を破ってしまいたいと思った。  そして、シンは理由を聞かずに、黒木さんに連絡を取れとも言わずに……電話をきっていた。  自分がした行動は間違っているのは分っていた……でも、今なら優を奪い返せる、家族に戻れる。  自分の帰れる場所が出来る。そう思ってしまった。  また優から両親を奪ってしまう、そんな考えは、シンの頭にはなかった。  後で知る事になる、自分がしてしまった過ちを。
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