*…碇…* #3

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「ごめんなさい。優の連絡先を教える事はできません」  気付けばそう言っていた。 「どうして……」 「なんで優が出ていったのか、理由がちゃんと知りたいからです。  私が優と話して、優から連絡を入れるようにいいます」  勝手に優の連絡先を教える事なんて、出来なかった。 「優は俺の大切な弟でもあります。だから、勝手に連絡先を教えるなんて出来ません」  これは、今まで優に連絡をとらせて貰えなかった、黒木さんへの復讐の意味も、少しはあったのかもしれない。  心の何処かで、自分がどれだけ苦しかったか、知って欲しかったのかもしれない。  でも、それよりも強く、シンは優を守りたかった。  今まで出来なかった分。 「貴方の気持ちも分かるわ。でも、優は私達の家族なの」 「……」  胸が苦しくなった。 『私達の家族』優には帰れる場所がある。  でも、俺に帰れる場所は……。 ……。 「ごめんなさい。仕事に戻らないといけないので……優の事は任せてください。 必ず電話させますから」 「ちょっ――」  シンは強制的に電話をきっていた。  なんだろうこの喪失感は……。  携帯を握る手が、ダランと下に垂れた。  結局、黒木さんの優に対する気持ちを聞けただけで、何が原因でこうなったのかは、聞けないまま。
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