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*…幸せ…* #3
部屋から出て、相沢を探す。どこも電気はついていなく、暗かった。
キッチンのある部屋に入ると、人影が見えた。冷蔵庫の前で誰かうずくまっている。
「相沢?」
相沢であろう塊は、ピクリとも、反応しない。顔が見えないかと、1歩ずつ近付く。
「相沢……」
返事はない。少し目が慣れてきて、視界が良くなる。その時だ亜紀の顔が見えた。
「亜紀っ」
何故亜紀がそこにいるのか、頬が光っている。泣いていた。そして相沢の姿も次第にはっきりしてくる。
相沢が亜紀を抱き締めていた。
どうしてそう言う展開になっているのか、考える余裕がなくシンはただ突っ立っていた。
「せんせぇ……」
亜紀の小さな震える声が耳に届く。
次の瞬間、亜紀は相沢の手をすり抜けて。シンの胸に飛び込んできた。
胸に顔をうずめる。
本当は自分も両手で包み込みたかった。泣いている君をギュッと包み込みたかった。
相沢が静かに部屋に戻っていく。シンはそんな相沢に何もいうことが出来ない。
静寂。
亜紀の体からするだろう、石鹸のにおい。
体温。
愛しい。
愛しい。
愛しい。
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