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本当は、君と幸せになりたい。そう望むのは贅沢すぎるんだよな。
亜紀はしばらく黙っていたが、
「私も先生なんて……だい……嫌い」
そう言いシンの背中に腕を回した。
シンの気持ちはちゃんと亜紀に伝わったのだろうか……。。
小さく震える君の体……大嫌いなんて言葉を言わせたのに。
胸は苦しくならずに、逆に安心感が包んだ。
(亜紀ごめんな……)
亜紀はシンから離れると、笑顔を見せた。
そして、首から指輪のさがったネックレスをとった。
「先生……先生もくるしかったでしょ?
嘘でも私を迎えにくるって言ってくれてありがとう」
涙のたまった瞳は、何かを決意した瞳だった。
「これ、返しますね」
手にそっと乗った指輪とネックレス。
まだ温かいその二つは、君の温もりを残して寂しく泣いているようだ。
君は今どんな思いで、見つめているのか。
愛しい人よ泣かないで。これからは笑って歩いて欲しい。
たとえ他の人と一緒になったとしても、君が幸せなら、それでいいんだから。
手放したくない気持ちは、心の奥にしまって。
禁断の恋という呪縛から開放してあげる。
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