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「そっか……」
静寂が二人を包む。シンの顔色を伺いながら、桜井は黙ってコーヒーをすすっていた。
「俺、やっぱり帰るわ」
「……少し休んでから帰れば?」
「大丈夫。コーヒーごちそうさま」
そう言うと、シンはソファから立ち上がり、扉に向かった。そんなシンに桜井は、
「細川くん。何か悩み事とかあるんなら、ちゃんと相談してよね。
運転気を付けて」
と軽く手を振った。シンは何も言えなくて、黙って部屋を出た。
――それから、どれくらい車で走ったのだろう……陽は沈みかけていて、海と空を赤く染めている。
しばらくエンジンを止め、その景色を眺めタバコを吸った。
(眩しい……)
自分は何をやっているんだろう、何が幸せなんだろう。
君はどうしているんだろう……君は幸せだろうか……。
手に入れたいものほど、するりするりと逃げていく。
そして、側にいたからこそ、孤独感が大きくなる。
孤独を感じないために、近づいたのに、最後には大きな孤独しか残らなかった。
近づく前より、近づいたら大きくなる孤独は、離れた瞬間に俺を包み込み。真っ黒に染めた……。
――独りが怖い?
最初から何も望まなければ、そうはならなかったのに。
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