*…偽り…*

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 冷たいベッドが語っている……もうあの人は隣りにいない。もう戻る事はないと。  目を閉じると昔の記憶が頭の中に現われる。それはとても幸せだった記憶が4割と、残酷だった記憶が6割。  どうしてだろう……逆だったらいいのに。  いつも明るかった君、でも心は荒んでいた。それに気付いてあげられて、原因を取り除いてあげられたら……君はいまでも側に居てくれたのかもしれない。  真っ赤に染まったバスタブが忘れられない。  青白い君の肌が忘れられない。  細い細い息が忘れられない。  助かると思っていた……でも、流れ出した血の量は多すぎた。  それほど君は苦しんでいた……。  すぐには死んだなんて実感できなかった。ひょっこり帰ってきそうな、朝起きたら隣りにいるような、そんな気がしてならなかったが。  あの日から、隣りに温もりなど戻ってこない。  君が完全に居なくなったのは、出棺の日。最後に君に触れた時……冷たくて、もう君じゃなかった。  それはただの君に似た人形。  愛した体ではあっても、君じゃない。  もう君じゃない。
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