12人が本棚に入れています
本棚に追加
冷たいベッドが語っている……もうあの人は隣りにいない。もう戻る事はないと。
目を閉じると昔の記憶が頭の中に現われる。それはとても幸せだった記憶が4割と、残酷だった記憶が6割。
どうしてだろう……逆だったらいいのに。
いつも明るかった君、でも心は荒んでいた。それに気付いてあげられて、原因を取り除いてあげられたら……君はいまでも側に居てくれたのかもしれない。
真っ赤に染まったバスタブが忘れられない。
青白い君の肌が忘れられない。
細い細い息が忘れられない。
助かると思っていた……でも、流れ出した血の量は多すぎた。
それほど君は苦しんでいた……。
すぐには死んだなんて実感できなかった。ひょっこり帰ってきそうな、朝起きたら隣りにいるような、そんな気がしてならなかったが。
あの日から、隣りに温もりなど戻ってこない。
君が完全に居なくなったのは、出棺の日。最後に君に触れた時……冷たくて、もう君じゃなかった。
それはただの君に似た人形。
愛した体ではあっても、君じゃない。
もう君じゃない。
最初のコメントを投稿しよう!