*…偽り…*

4/15
前へ
/35ページ
次へ
 どうして君は自分を傷付けたのか、それが今でも分らない。  変わりに俺を傷付けてくれれば良かったのに。  君に似た人形が黒い車に乗せられ遠くなっていく……その時はじめて涙が流れた。耐えていた訳ではない涙が……君という存在が消えてしまったという事を実感して。  あれは君じゃないのに……。  君は何処に行ってしまった?  どうして君は、体と心を離してしまったの……。  心はどこにいった……?  分らない。  分らない。  分らない。  分かるのは、もう君が戻ってこないという事だけ……。  大切なものはもう……目に見えない。もう感じる事すら出来ない。  なのに、その日から君の存在が俺の中で益々、大きくなった。  今さら気付いても、もう遅いのに……。  俺はずっと、君と過ごす当たり前の日常に、いつの間にかボケていたのかもしれない。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加