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桜井の昔の恋人の命日がもう少しだという事。その日が近づくに連れて、暗くなり、誰がみても分かるくらいに落ちるらしい。
「そんな事が……」
「うちのお父さんも心配してて……あんなにいつもヘラヘラしてる奴が、いきなり沈んだら、やっぱりこっちだって心配だし」
真奈美は少し黙った後、
「細川先生はサクと仲いいよね? どうにかしてあげられないかな?」
いきなり何を言い出すんだと思いながらも、シンは真奈美を優しく見つめると、
「難しいな……真奈美の言いたい事は分かったが、俺にどうにか出来るような事じゃないと思うけど」
そう言うと、真奈美の表情は一気に悲しくなった。
「そうですよね……」
そして部屋には静寂が訪れた。真奈美はカップを握る手をジッと見つめたままだ。
シンがどうしようかと考えていると。
「サク……」
小さく聞こえた声。
「サク……この時期になったら、私と話しさえしてくれないんです。
私の事避けるから、私には何もできない……」
俯いていて、顔を見ることは出来なかったが、声が少し震えていて……。
「大丈夫か?」
そう声をかける。
「大丈夫です」
と答える声は、とてもそういう風には聞こえなかった。
仲がいいから、避けられる事や、何も出来ない事が辛いんだろう。
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