*…約束…* #2

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 静かな車内、亜紀は今も唇を噛み締めている。 「亜紀……黙っててごめんな」 「……」 「亜紀? 大丈夫か?」 「なんで隠してたんですか?」  やっと喋った亜紀。 「隠していた理由か……それは、俺の意志が弱かったからかな……」  思わず苦笑いしていた。 「俺な、亜紀の父さんに会って“今は離れていて欲しい”と言われるまで、甘く考えてたんだよな……。 近くにいる亜紀に、まだ触れられる。会えるって思っていた」  静かな車内にシンの声だけが聞こえる。 「自分に甘い俺は、きっと、今日だけ今だけと言って。亜紀に会いに行っていたと思う」  自分の意志の弱さ、きっと今の距離がなかったら、突き放してなかったら、確実に会いに行っていた。  抱き締めていた。 「亜紀の父親は、俺と亜紀の関係を知っても、突き放したりしなかった」  近くの公園の駐車場に車を停めた。 「普通なら、生徒に手を出すなって、怒るだろ? でも、亜紀の父親はそうじゃなかった」  亜紀は黙って、イルカの置物を見ている。 「そんな父親に、亜紀のために今は離れて居て欲しいと言われて。それが、正しい選択なんだと改めて気付かされたんだ。 それで俺は、亜紀に今は近付かないでおこうと強く心に決められた」  今は近付いちゃいけない……それが悲しい現実で、正しい選択。  教師と生徒という関係は、俺達を隔てる壁。
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