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今すぐに、でも今更だろうか……。相沢が『亜紀』と呼んでいる姿を見て、もうそんなに近づいているのかと、心が揺れた。
今更割って入っていいのかと……。
「帰るぞ!」
「ほらっ!?」
亜紀へと伸びる相沢の真っ直ぐな手。
亜紀はその手を掴むのだろうか……?
1歩1歩、距離が近付く、亜紀の短くなっている髪が揺れていた。いつ切ったのだろうか?
亜紀の顔を見る事は答えがでてるような気がして出来なかった。
「亜紀……見つかってよかった、探したんだぞ」
相沢は亜紀の手を掴み引き寄せると、ギュッと亜紀を抱き締めた。
相沢の大きな腕の中に、すっぽり収まっていく。
安心と同時に、胸を締め付ける厄介な思い。
引き剥がしたい。
そう思うも、亜紀が泣き出したのを見て、出来なかった。
(怖かったよな?)
優しく撫でてやりたいのに……何も出来ない自分。
でも、良かった無事で……。
「泣き虫だなぁ~」
と頭を撫でる相沢。今、相沢のように真っ直ぐな男になれたら、強くなれるのかもしれない。
二人の事を見ている事が出来ず、さっきまで亜紀と一緒だった女性の元へ歩いた。
(俺が出来る事はこれくらい……)
女性にお礼を言い、他にもいたガラの悪い男たちにも頭を下げた。
ありがとうという気持ちを込めて。
シンの後ろで相沢も頭を下げていた事も、亜紀がずっと見ていた事もシンは分からなかった。
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