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『相川家之墓』
まさかとは思うが、桜井の見近に、同じ姓の人がいる。ただ同じだけかもしれないが……。
花をそえ手を合わせる桜井。シンも手を合わせた。
(だから桜井は……)
どれくらいそこに居ただろうか、赤い空が、黒く染まっていく。
「いきますか」
「あ、あぁ」
振り向いた桜井の顔は、薄暗くて良く見えなかった。
桜井の背を見て歩く、とても静かで、足音だけが聞こえていた。
車のそばで、二人並んでタバコを吸う。煙りはゆっくり上へと上がり消えていく。
「細川、今日は付き合ってくれて、ありがとな」
「いいよ、べつに」
桜井とは、仲良くなって間もないが、何故か心を許して貰っているような感覚がして、嬉しかった。
「細川はさぁ……俺と同じ匂いがする」
「なに匂いって?」
いきなり言われた言葉に、シンは桜井を見ると、
「なんとなく、お前は俺に似ているような気がしただけ」
「俺と桜井が?」
「そう」
「そうか?」
桜井は何がいいたいのか、黙って頷いた後、何もいわなかった。
「……サク」
その時、微かに聞こえた桜井を呼ぶ声。それと同時に、桜井が驚いた顔をしたのが分かった。
「サク」
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