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数メートル先に見える人影、近づいてくる度に、その人が誰なのか、鮮明に分かる。
「真奈美、なにしてるんだ?」
シンは思わず聞いていた。桜井は静かにタバコを消している。
「ちょっと、お墓に……」
真奈美の声はとても小さい。桜井はまるで真奈美の事を無視するかの様に、黙って車に乗ってしまった。
その瞬間、真奈美は泣き出した。シンはすぐにかけより、大丈夫か? と声をかけたが、真奈美は声を押し殺して泣くだけだった。
――「落ち着いた?」
あれから、シンは真奈美を適当な場所に座らせた。車からはさほど離れていない場所だったが、桜井が乗っている助手席からは、この場所は見えないだろう。
「ほら、涙ふけ」
シンに渡されたハンカチで真奈美は、涙を拭った。
今目の前にいる真奈美の姓は『相川』あの墓と一緒だ。
「真奈美、真奈美は桜井の彼女と親戚かなんかだったのか?」
「ううん……」
真奈美は顔を横に振ったあと、
「私のお姉ちゃんだよ」
と呟いた。
(やっぱり……)
なんとなく、そうなんじゃないかと感じていた。桜井が真奈美を無視する理由は分からないが、何かあるのだろう。
「そっか……」
「サク……なんで私の事無視するのかな? 私が恨んでるって……思ってるのかな?」
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