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「なんでそう思うんだ?」
真奈美は少し顔を歪めると、
「私……お姉ちゃんを返してって、サクに言った事があるの。だから……」
桜井のせいじゃない事は知っているのに、そう言ってしまった事があると、真奈美は唇を噛み締めていた。
そして、それが桜井を苦しめているんじゃないかと……何度か謝ろうと思ったが、謝りきれなかったらしい。
「きっと、サクは私が恨んでるって思ってるから、話しかけないんだ……だから私とは喋りたくないんだ……」
「勝手に思い込まない方がいい。ちゃんと桜井に聞いた方がいい」
「無視されてるのに?」
まるで、優と自分を見ている様に感じた。桜井が自分を責めているのなら……まるで自分のようだと。
「私……どうしたらいい? サクがあんなになっちゃうのは嫌」
涙を流しながら訴えてくる真奈美の頭をシンは優しく撫でると、
「少し待ってて。俺が桜井と話してくるから」
と車へと歩きだした。真奈美は黙って首を縦に振り、シンの後ろ姿を見送る。
もう辺りは暗く、虫の優しい声が響いていた。
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