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「でもな……」
真奈美が歳を重ねる度に、美咲に似てきて、それが辛いんだという。
「美咲がいるんじゃないかって……」
そういう錯覚に襲われる。そして、自分の気持ちが、暴走しそうになるんだと話した。
「真奈美だと分かっているのに……胸が騒ぐんだよ」
美咲に似ているから、自分がおかしくなると。
「美咲の命日が近づくにつれて、それが強くなるんだぁ……。
どうしても、ダブらせてしまう……」
シンは黙って聞いていた。
「こんな事、真奈美に言えるわけない……。
だから、無視する事しかできない。近付いたら、手を出してしまいそうで、自分が怖くなる」
桜井は深く息をつくと、シートに深くもたれた。
「俺はきっと……真奈美を襲ってしまうだろう……美咲に似ているという理由だけで、ときめく胸や欲望をおさえきれない」
だから、近づかない。美咲を鮮明に思い出す、この期間だから、冷たくしてしまう。
「そういう事だよ……」
桜井の話しを聞いて、何も答えられなかった。真奈美にどう話したらいいのかも、わからなかった。
「踏み込まなきゃ良かったでしょ? 真奈美はまだいるの?」
「あぁ」
「なぁ……俺が暴走しそうになったら、止めてくれる?」
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